QMblog's blog

レズビアン&ゲイライフをサポートするNPO法人アカーのWEBマガジン。編集部:「ふじべ・あらし」がお伝えしています。

『震災で感じた30代ゲイの徒然日記』(その2)〜Mさん〜

その1 その2 その3

●Mさん:

先日、人気ポップロックバンド「スピッツ」のボーカル、草野マサムネ氏が急性ストレス障害であることを発表しました。
地震の大きな揺れ・余震・甚大な被害とその報道・原発の深刻な状況といったすべてを感じ・目の当たりにしつづけることで、過度のストレス→精神的な障害になったとのことです。


「草野が倒れてしまいました。」で始まるオフィシャルコメント(http://spitz.r-s.co.jp/pop/201103/official_comment.html)を読んでビリッと衝撃を受けました。

ともすれば、
成人の男が何を甘ったれたこと言ってんだ、こいつ弱々しいな、と言われるんじゃないかと心配してしまうわたしには、草野氏の今回のコメントを出す行動が、とても勇気あるものに思えました。


軟弱、情けない、ガッツが足りない、などと言われるのを避けることに必死だった少年時代。そう言われたら、ゲイだってばれてしまうんではないかとビクビクしながら、わたしは、なんとか弱々しく見られないようにすることで、自分らしさのペースをつかめない十代、二十代を過ごしました。
いつからか、昭和から平成になって、
男らしさや女らしさが変化しだして、いまは性的指向やセクシュアリティについての理解もなだらかに高まってきたように思われています。実際に、本当に理解が高まって受容的になったのかは、まだわからなかったりもしますが。


この震災から三週間近くを経て、
独りになる時間や不便な生活になることで、一人ひとりが一生懸命考えて生きていることと思います。被災地の方々への思いを強く持って、行動している人も多くいます。一体となって、力を合わせています。


そんななか、テレビやラジオでは、「頑張ろう」、「強さを信じよう」と言ったメッセージも多く流れています。それは、心のこもったメッセージです。


しかし、ふと、もう一人の自分がこう思うことがあります。
頑張ってきて、もう頑張り尽くした人に、「頑張ろう」以外に必要な想いは、どういったものだろう、と。


草野さんの急性ストレス障害についてのコメント発表は、
災害の深刻度を比較したら大変じゃないと思われている環境で、しかし実際に心身への影響を公にすることで、「頑張ろう」や「強さ」と正反対のメッセージを発信することにもなります。


復興活動や生産性には不向きなメッセージかもしれません。


しかし、年配の方々、慢性疾患をもつ方々、障がいのある方々、言語の壁をもつ方々、子ども、妊婦さんや乳幼児をかかえる方々、感受性の高い方々、経済的に困っている方々、そしてもちろん成人も、「強さ」がプレッシャーになる瞬間もたまにはあるのじゃないかな、と思ったりします。(M)

「その3」につづく】

■『震災で感じた30代ゲイの徒然日記』

※本エッセイは、3月11日の東日本大震災から3週間後につづられ、NPO法人アカーの会員向けのニュースレターに4月2日号より3回に分けて掲載されたものを転載したものです。

震災よりふた月が過ぎようとしている現在、エッセイに触れての皆様の感想などお気軽にコメント寄せていただけるならうれしいです。