見えない夏〜映画『ミルク』〜
すぐそこまで迫った真夏の到来に押し出される形で、4月末から始まった映画『ミルク』の東京での上映もそろそも終ろうとしています。
アカーの事務所の場でも、『ミルク』を通して、実にたくさんの意見や感想が述べられるのを耳にしました。本日のエントリーでは、『ミルク』関連の記事の締めとして、『ミルク』についてのひとつの文章をご紹介します。これは4月下旬に、当会から、アカーの支援者の皆様に向けて送付された「定額給付金カンパのお願い」と一緒に同封された文章です。
「見えない夏」と題されたこの文章は、同性愛を巡るこの国の環境の中では、どうしても、こぼれ落ちてしまうような、微かなものたちに、注意を喚起するメッセージを持ったものでした。
見えない夏〜映画『MILK(ミルク)』鑑賞会のお誘い〜
◆ 春の一日をみなさまとご一緒に
街で道行く人々の装いも、くすんだ色のコートを脱ぎ捨て、鮮やかな春色になり、さわやかな風にすそをはためかせて歩く季節になりました。そんな春のひと時を共有するため、アカーでは、日頃お世話になっている支援者・会員の皆様と、映画を一緒に観に行く機会を計画しています。
◆ 話題の映画『ミルク』
選んだ映画は『ミルク』。米国のゲイムーブメントに殉じた一人の同性愛者のお話です。海の向こうの遠い国のことだから、この国に住む私たちの中で、サンフランシスコの「政治の季節」に馴染みのある方はそんなに多くないと思います。けれども、よくよく注意して観ると、アカー周辺に漂う空気の中にも、ちゃんとハーヴェイ・ミルクのサンフランシスコと同じスピリット(精神)が流れていることは、すぐに感じ取られるはずです。同性愛者の10代をサポートし(S.I.P.)、ゲイの視点からエイズを考え(ライフガード)、一般への医療サービスを提供することにチャレンジを始め(HIV検査相談)、レズビアンとして考える場(OM)をつくり、親と子が集う場を提供する。アカーが提供している日常のソーシャルサービスの中にも、ハーヴェイ・ミルクと通底するものが、ちゃんと含まれているのです。
◆ NPO法人アカーとハーヴェイ・ミルク
20数年前、当時高校生のメンバーが集まってアカーは結成されました。同性愛者であることを隠さず前向きに生きることができる場を、社会の中に作る活動の中で、1987年、私たちはハーヴェイ・ミルクの半生を描いたドキュメンタリー『ハーヴェイ・ミルクの時代』を目撃しました。そして1991年、初めてサンフランシスコを訪問したのもハーヴェイ・ミルクの活動を象徴する場所だったからでした。1992年には、ハーヴェイ・ミルクの後継者(トム・アミアーノさん)を日本へ招聘したこともありました。ハーヴェイ・ミルクと私たちとを結ぶ、そんな表面的な接点や経緯はたくさんあります。けれども、ミルクとアカーを結びつけている、もっと大切で重要なことがあります。
◆ 世界中で受け継がれているスピリット
どんな運動も、それが続いていくとき、数え切れない日常のドラマがあり、そこに参加するたくさんの仲間がいて、そして、ずっと引き継がれていくものがあります。20数年間、アカーが続けてきた毎日の原点にも、「私たちの生を少しでも良くしていきたい」という、ひとりひとりの「情熱」がありました。それは、30年前、ハーヴェイ・ミルクが胸に抱いていた「情熱」とまったく同じものあり、今でも世界中のたくさんの場所で受け継がれているスピリットだと思います。
◆ 胸に隠れた情熱を
春の空気の底には、「夏の気配」が含まれていて、冬の日々でさえ、既にそこには目には「見えない夏」が存在しているといいます。風薫る5月。『ミルク』の鑑賞会で、「見えない夏」のように私たち一人ひとりの胸に眠っている“情熱”を再生し合いませんか? 映画チケットはすでにまとめて購入してあります。たくさんのみなさんと感想を話し合えることを楽しみしております!