幻の終わり(4/4)
幻の終わり(4/4)
逆島鉈:
結局、二人は揃って店を出て行った。
真はたぶん吉村と寝ているだろう。
そして気が向いたらまた吉村と会うかもしれない。
もしかしたら二度と会わないかもしれない。
どっちにしても、僕と真はもう二度と抱き合う事はないのだ。
二丁目(ここ)では、張りと艶(つや)がなくては生きてはいけない。
自分の目の前で、別の男と消えた男とは、もう二度とは戻れないのだ。
高校時代に吉村をひどくいじめたバチが当たったのだろうか。
長い長い幻を夢見ていた期間が終わった吉村は、大人になった今、何を夢見の代わりにするのだろう。
この狭いカウンターの中で、僕は吉村が真の腕の中で失望を味わった事を、ひたすら希い、呪った。
僕の別の幻も、今日終わった。
僕はまた、独りになった。
【完】