あの夏の夜のできごと〜(正和1回目)
季節はいつごろだったか覚えていないけれど、それは夏の終わりだったように思う。
当時、まだ自分以外の同性愛者に会ったことがなかった。
僕は5年制の専門学校に通ってて、孤立した状況のなかでお決まりのように、異性愛者の友人に恋して、それ以上なにもできないという生活を送っていた。
―――今日からスタートする正和×智子のライフヒストリー、1回目のテーマは「初恋」。同性への特別な感情に、遅かれ早かれ気づくときがくる。多くの場合、初恋は報われないで終わってしまうけど、とても大切なことを教えてくれる。まずは「正和」さんの初恋体験からどうぞ。(Arashi)
サトシとは小学校時代からの付き合いだった。
かれこれ7年ほども友達関係を続けていて、恋愛感情を抱くようになってから4年が経っていた。
彼とは、せっかく同じ学校を受験して入学したのに、違うクラスになってしまった。かなりがっかりしていたけれど、いっしょに登校していたし、学校帰りも一緒に遊んだり、部活も同じだったので、それなりに接点は保たれていた。
けれど、クラスが違えば、だんだん関係も薄くなってきてしまうもの。
(ちなみに、その学校は5年制にも関わらず、5年間ずっとクラスのメンバーは同じというスゴイ学校だった)。
3年生にもなると、サトシは、クラスの仲間との関係を強めていった。サトシといっしょに行動することも少なくなっていった。
彼自身、部活よりも、帰宅部の友達のように、バイトしてお金を稼(かせ)ぎたがっていたらしい。
(正和)【続く】