同性愛者の可視性
「サンフランシスコ・ゲイ・コミュニティ形成史」
ゲイがサンフランシスコに集住してコミュニティを形成するということは、ゲイの側にとっては異性愛社会に存在するような伝統的な世帯という構造のなかにある家族の役割にとって代わるものを構築しようという意味があった。
また、ゲイ・コミュニティが異性愛社会に対してもっている意味というのは、集まって住むということによって「可視性」を獲得したということである。
ゲイは異性愛から差別されている「存在」ではある。
けれども、その差別ゆえに社会のなかでは同時に「存在」することすら否定された「非存在」でもあった。
このように社会のなかで目に見える「存在」となることはゲイ・コミュニティの形成にとっていかに重要であるかわかるであろう。
コミュニティがあるから人が集まり、人が集まるからコミュニティが成立し、またそれらの人はコミュニティの外部に対して可視的な存在になるということである。
【続く】 「サンフランシスコ・ゲイ・コミュニティ形成史」
※(本記事は当時のアカーの機関紙『ゲイ・ライツ』の1993年臨時増刊号に掲載された同名記事をベースにしています)