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レズビアン&ゲイライフをサポートするNPO法人アカーのWEBマガジン。編集部:「ふじべ・あらし」がお伝えしています。

少しだけゲイの方へシフト、世界のエイズ予防状況

少しだけゲイの方へシフト、世界のエイズ予防状況


メキシコのメキシコ・シティで開催された第17回国際エイズ会議が閉幕してから2週間が過ぎました。男性同性間のエイズ予防が重要なキー・トピックとなったのは、世界規模のエイズ会議としては初めてだったとのこと。そういう意味で、エポック・メーキングな会議であった、と思います。


そんな会議に合わせて、世界のゲイやMSM(男性とセックスをする男性たち、の意)を取り巻くHIV/エイズ状況を示すデータや各種調査の結果発表がありました。それらを紹介する記事が、海外のメディアに配信されていました。残念なことに、日本でそれらが紹介されることはほとんどないと思うので、少し長いですが訳して紹介します。


(日本語訳は、夏休みの間、アカーの事務所にインターンのためやってきて、いろいろなボランティアをしてくださった法政大学の学生、古市さんにも手伝っていただきました。)

ソース:

Global AIDS Prevention Gives Short Shrift to Gays(The Advocates.com)

ジョージ・サベトラの真実の瞬間ときは、彼が5000人の聴衆の前で、ゲイの間でAIDSの広がりを食い止めるために、ほんのわずかなお金しか使われていない、ということを述べる感動的なスピーチの最中に訪れた。

メキシコ連邦政府の職員である彼は、一息つき、そして、自身がゲイであることを初めて公にした。



彼と彼の同性のパートナーが一緒に写った写真を掲げたとき、聴衆は激しく拍手した。アフリカやインドからの男性たちは、目に涙を浮かべて彼を祝福した。



「私が、彼らのヒーローだと彼らは言うんだ。故国でも同じことができればよいのに、って。彼らはそう言ってくれた」。サベトラ氏は、HIVに感染しており、多くのゲイが否定の中で生きている国(メキシコ)の、エイズ予防を担うプログラムの所長である。


国際エイズ会議期間中の火曜日に行われたサベトラのカミングアウトによって“もしエイズがコントロール可能なら、ホモフォビア(同性愛嫌悪)は踏み消されなければならない”というとても力強いメッセージが世界に発信されたのだ。




エイズで亡くなる人の数は減っているが、多くの国では、新たにHIVに感染するゲイ・バイセクシャル男性の感染率が驚くべき値で上昇している。だが、UNAIDS(国連エイズ合同計画)の2006年の最新データによると、男性とセックスをする男性の男性たちを対象にした予防に使われる額は、全世界でHIV予防に使われる額66,0万ドルのうち1%にも満たない、という。



UNAIDSは、男性とセックスする男性が、HIVに感染するリスクにさらされている層の中でも、最もHIV予防へのアクセスが限られている層である、と言っている。


そして、発展途上国では、差別のせいでゲイやバイセクシャルの男性が潜伏させてしまい、そのことが彼らを最もアクセスするのが困難なグループのひとつにしている、と専門家は指摘している。



メキシコからインドまで、驚くべき数の男性とセックスする男性たちが、自らを「ゲイではない」と主張している。そして多くの国では、その政府が国内に同性愛が存在することをいまだに認めていない。


「男性とセックスをする男性たちの存在を認知しないか、あるいは、彼らが存在したとしても、犯罪化してしまうような国々にいる男性とセックスをする男性たちに、HIV予防を提供するのは非常に困難である」。国際エイズ会議を運営している国際エイズ学会(International AIDS Society)の事務局長であるクレイグ・ マックルーアは言う。




amfAR(米国AIDS研究財団)によると、86カ国で、同性間での性行為は犯罪として見なされており、7カ国では死刑に処せられるという。



国際エイズ会議の開会式で、国連事務総長潘基文氏は、「ホモフォビア(同性愛嫌悪)に反対する法律を通過させたメキシコの勇気ある例に続こう」と各国に訴えた。



2003年、メキシコは、法律で性的指向に基づく差別を禁止し、同性愛に対して差別感情を持たないクリニックを開業させた。


メキシコ政府は、ゲイの息子たちを受け入れている母親たちのラジオ・スポットを含むキャンペーンを国家事業として行った。

サベトラ氏の事業では、ゲイ・バイセクシャル男性の間でのHIV予防に、1,0万ドルのうち10%を充てている。



世界的に見て、発展途上国の中で、男性とセックスする男性のHIV感染率を調べている発展途上国はほとんどない。しかし、そういった途上国の、いくつかの国を調査した研究者たちによると、ゲイ、バイセクシャル男性の感染率は、それらの国の一般成人人口の感染率の約2倍近くになる、という。



「この戦いは、ハイリスク・グループを優先順位の高位におく疫学者によって進められる必要がある”、人権の擁護の観点からだけでなく、公衆衛生の観点からも、進める必要があるのだ」ジョン・ホプキンス大学の「公衆衛生と人権センター」のディレクターであるクリス・ベイヤーは言う。


「これはウィルスなんだ。だからウィルスがあるところに、お金をかけなければならないのだ」


128カ国のゲイ・バイセクシャル男性から集められたデータに基づくAmferのデータによると、ゲイ・バイセクシャル男性は、一般成人よりも19倍HIVに感染しやすい、という。



メキシコでは、ゲイ・バイセクシャル男性に対する数字は、109倍になるという。


現在まで、メキシコでHIV感染を診断されたうち57%が、男性同性間のコンドームなし性行為によって感染している。



タイは、セックス・ワーカー、ドラッグ・ユーザー、出稼ぎ労働者の間でのHIV感染を押さえ込んだ大規模なコンドーム・キャンペーンの成功が称えられた後で、ゲイ・バイセクシャル男性の間で、“未曾有の感染率急増を見た”国である、とAmferの最高責任者であるケヴィン・フロスト氏は言う。



Amferによる、タイのゲイ、バイセクシャル男性の間でのHIV陽性率は15%以上であり、
これはタイの一般層の1.4%に比べてずっと高い。タイの予防プログラムは、最も感染しやすい層であるゲイ/バイセクシャル男性を無視していると、フロスト氏は指摘している。



「彼らは、セックス・ワーカーや女性とセックスをしていないからだいじょうぶ、そう彼らは信じていたんだ。HIV予防キャンペーンが対象としていたのはセックスワーカーや女性たちだったからね」フロスト氏は言う。「これは、途上国では時代遅れになりつつあるシナリオだけどね。」



問題を複雑にしているのが、ラテンアメリカ諸国から南アジア諸国にいたる国々で、男性とセックスをする多くの男性が、自らを「ゲイではない」と主張していることだ。



UNAIDSによると、男性と性行為を持った述べるラテンアメリカ男性の30%以上が、女性とも予防をしない性行為をしている、とのことだ。そして、その多くは結婚もしている。



「そういうことが好きな人もいることは、誰もが知っているんだ」48歳のサベトラは言う。「自らをゲイだと呼ぶ代わりに、自分の行動を正当化した方が簡単なんだ。酔っていたんだ、とか、性的に興奮してたから誰でもよかったんだ、と彼らは言うのさ」


トランスヴェスタイト(異性装者)とセックスをした後に、彼らをボコボコに打ちのめす者たちもいる、という。なぜなら、彼らは自分自身を恥じているからだ、と専門家は言う。


政府までもが、同性とセックスをする男性の存在を否定している。去年、イランの大統領マフムド・アフマディネジャド氏は、ニューヨークにあるコロンビア大学で「イランにはあなた達の国にいるような同性愛者は、いない」と言った。



アフリカのマラウィでは、世界銀行とその他の国際機関の支援のもと、国で初めてのゲイグループが、2006年に作られた。


「人民の開発のためのセンター」と呼ばれるそのグループは、マラウィにも同性愛者が存在しているということを証明するため100人のゲイ男性を、差別について、調査した。



マラウィでは、同性間での性行為は、禁固14年間の処罰の可能性がある。



同グループが、200名のゲイ男性に抗体検査をした結果から、マラウィの一般成人男性の12%に対して、ゲイ男性は21%がHIVに感染していることがわかった。



「これは、AIDSとの戦いで前進していないことを意味する」。このグループのディレクターであるギフト・トラペンス氏は言う。彼は、絞首刑の脅迫をEメールで受けたことがある。




エイズ・アクティビストたちが言うには、”同性愛者”や”ゲイ”という言葉を使うことを避け、代わりに“男性とセックスをする男性”、あるいはMSM(Men who have the sex with menの略称)というラベルを使う。そうすれば、彼らの活動がスティグマによって邪魔されなくてすむ、という。



アショク・ロウ・ カヴィ氏(Ashok Row Kavi)氏が、ゲイやバイセクシャル男性のためのグループとしては、インドで初めてとなるいくつかのグループのうちの1つであったグループを始めたとき、言葉を慎重に選ぶことの大切さを学んだ、という。


ハムセーファー・トラストが、1999年に調査した結果、約14%のゲイ・バイセクシャル男性がHIVに感染していることがわかった。



カヴィ氏が述べるには、エイズ問題を扱う役人たちと話をするとき、彼は完全にパニックになってしまうという。「それまで、インドにゲイやバイセクシャル男性は存在しないと思っていたからね」




しかし、去年、彼らは、男性と性的関係を持っている男性の定義をHIV予防キャンペーンを開始するにあたって、その健康事業案に男性とセックスをする男性の定義を加えた。その定義は、既婚男性も含むものだ。




カヴィ氏は、男性のクライアントに、どのように怖がらせないで同性とのセックスについて尋ねるのか、ということをヘルス・ワーカーに研修している最中だ。


「私はヘルス・ワーカーたちに、こう言うように伝えています。“男同士が非常に親密な文化がたくさんあります。あなたも、そういった男性の一人ですか?”と」。カヴィ氏は「とりわけインドのように、同性間の性行為を禁じるソドミー法が存在する国では、こういった質問に対しては、とても繊細にしなければならないのです」と言う。


そして彼は続けた。「だから“同性愛”という言葉を使わないのです。もし誰かが男性に同性愛者と言うと、言われた側は言った側を叩くでしょうね」


(Julie Watson,P)


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