「ジョージ・チョイについて思うこと」(1/3)〜(しんじ)
――身と心と精神をエイズに蝕まれ、徐々に壊れていくひとりのアジア系ゲイの姿を、克明に、そして、冷血に井田真木子の筆は書き進めていく。「酷すぎる。こんな描き方ってないんじゃないだろうか? 真意が理解できない」。当時は、そう思った。そして2007年9月30日。今は亡き井田さんを追悼するメモリアル・サービス2007に参加したことが、きっかけになって、もう一度『同性愛者たち』を訪れてみた。何かが変わっていた。
「ジョージ・チョイについて思うこと」
〜(しんじ)
この本(井田真木子著『同性愛者たち』)に登場するジョージ*1は、僕にとってはつらすぎた。
「神様のくれる命のために同性愛をやめたい」というくだりは、
クリスチャンであり、同性愛者のアイデンティティを大切に思う自分にとっては衝撃であった。
あのジョージの精神がそんな状態になるなんて……。
そして、どうしてわざわざそんなことまで本に書かなくちゃならないのか理解できなかった。
そもそも、「“やめたいと思ったらやめられるんだ”と、読者が誤解するじゃないか!」という反発もあった。
「病状が神経系に進行すれば、状態によっていろんなことを言うだろうし、それにいちいち解釈をつけて本来の人格をねじまげるのは冒涜でないのか?」、というのが当初の憤慨にも近い印象だった。
だから、僕はかつて読んだ時に、そこの部分はおそらく無意識のうちに受け入れられず、不愉快な気持ちと共に斜め読みしていたように思う。
*1:ジョージ・チョイ(1960-1993)。サンフランシスコのアジア系ゲイグループGAPAの共同代表責任者。日本と西海岸の距離を越えて、同じ目的をもった活動家としての共感からアカーに惜しみない支援を与えてくださいました。