QMblog's blog

レズビアン&ゲイライフをサポートするNPO法人アカーのWEBマガジン。編集部:「ふじべ・あらし」がお伝えしています。

15years, NYのハーヴェイ・ミルク高校とHMI訪問

現在、QMブログでは、去年末に実施された、ニューヨークのレズビアン&ゲイコミュニティ視察( タグは【旅】ニューヨーク2008」)の報告を毎日少しずつお届けしていますが、15年前の1994年にも、当会(アカー)では、ニューヨーク市のコミュニティー視察を実施しました。


94年の視察報告の中から、昨日のエントリーでも、紹介したハーヴェイ・ミルク高校ヘトリック&マーティン・インスティチュート(HMIを1994年の6月30日に訪れた時の様子について紹介できればと思います。

1994年6月30日、いつか「こういう学校がなくなるのが理想」

ニューヨーク市立大学に近いビルの3階にあるHMIをアカーのメンバーが訪問し、施設の見学とそこで働くスタッフから活動内容について説明を受けました。HIMの将来のことを質問されて、「こういう学校がなくなるのが理想だ」と答えたHIMの担当スタッフの談話が印象に残っている、と記している、当時の視察メンバーのコメントなどもありました。15年の時を経て、変わったことと不変のこと、両方あるんだな。そんな感慨が、当時の報告集をめくりながら浮かびあがってきました。

f:id:QMblog:20090109203933j:image



ヘトリック&マーティン・インスティチュート(1994年6月30)

f:id:QMblog:20090109203647j:image

f:id:QMblog:20090109205001j:image

f:id:QMblog:20090109205739j:image

ハーヴェイ・ミルク高校の授業風景を写した写真パネル

f:id:QMblog:20090109204132j:image

1994年視察当時も、ハーヴェイ・ミルク高校では、普通高校と同じ授業を行っていました。当時、「州派遣の教師は2名、この他に、2名の補助教師とボランティアがいる」「学生数は30名で、毎日入学希望の問い合わせがある、予算が増えたために9月から生徒を45名にする」などのお話を担当者から聞くことができました。

ホームレス・ユースへのサポート

f:id:QMblog:20090109204322j:image

1994年当時、HMIでは、セクシャリティが理由で家出、もしくは、家を追い出されたユースを対象に、食事・医療・シャワー・衣類などを提供する「プロジェクト・ファースト・ステップ」というプログラムを実施していました。




にほんブログ村 恋愛ブログ 同性愛・ビアン(ノンアダルト)へ 
面白い記事だったら1clickでQMblogを応援☆




世界最大のHIV/エイズ団体! GMHCを訪問


GMHC訪問〜2008年12月23日


GMHC(Gay Men's Health Crisis)は、エイズ禍が、本格的にニューヨークのゲイ・コミュニティーを襲う前の1981年、数人のゲイによって始められました。設立当初の資金は10万円程度、公的資金の援助は、まったくない状況からスタートだったそうです。現在では、感染経路、性別、性的指向、人種を問わず広く、HIVの予防活動や患者・感染者への支援を行う、世界最大のHIV/エイズ団体になっています。

ビル全体が関連フロアー

f:id:QMblog:20050101031228j:image

巨大なビル一棟が1階から最上階まですべてがGMHC関連のフロアー。各フロアーに、感染者を治療する病院から、法律部門、予防教育部門など、たくさんの部門が仕事をしていました。ホリデー・シーズンに突入していた12月23日、私たちが訪問して、お話をうかがったのは、主にゲイへの予防啓発を行う部門でした。


ゲイへの予防啓発

f:id:QMblog:20050101012322j:image


テーブルに啓発資材をずらっと並べて、各担当者が説明してくださいました。ニューヨーク市を始め全米では、黒人やヒスパニック系のゲイの間での急激なHIV感染が問題になっていることを受けて、GMHCでも、有色人種をターゲットにしたソーシャルマーケティングの手法を使った、たくさんのキャンペーンを行っている、とのことでした。


f:id:QMblog:20050101022758j:image

キャンペーンを始めるにあたって、どのようにして対象層からインタビューを行い、パンフレットを作成していったのかなどのプロセスなどについて説明がありました。「キャンペーンの効果評価は、どのように行っているのか?」 また「対象層が、イメージを目にすることが、実際の行動変容にどれだけつながるのか?」など、研究サイドからの質問も投げかけてみました。


ニューヨークと東京と場所は違えども、共に巨大なゲイ人口を持ち、そこでそれぞれゲイ向けの予防啓発を実施している共通の立場から、ニューヨークと東京、日本のゲイの間での感染について、いろいろなトピックをシェアすることができました。


例えば、近年のニューヨークのゲイの間では、クリスタルメスというセックス・ドラッグが爆発的に流行っていて、セックスドラッグの影響下で行ったセックスが感染を引き上げている、とのことでした。数年前、日本でも「5meo」が流行した時に、ゲイ向けの出会い掲示板に「ゴメオ・キメキメで〜」のような表現でパートナーを探すようなことがありましたが、ニューヨークでも、“PNP”(party and playの意)という掲示板でよく見られる隠語が、ドラッグや酒を使ってセックスすることを指している、なんてことも教えてもらいました。


f:id:QMblog:20050101022521j:image
コミュニティ啓発のコーディネーターを務めるブライアン・トイネスさん(左)、ゲイ部門のディレクターのビル・スタックハウス博士(中)。ブライアンさんは、お話の後、ビルの中のツアーの役を引き受けてくださいました。


「かつて欧米のゲイコミュニティでは、一度は感染を抑えることができたはずなのに、どうして近年またゲイの間での感染者が増えていると考えるか?」というある意味、とっても本質的な質問もぶつけてみました。それに対して、「エイズ治療薬が発達して、感染しても死ななくなったから、ゲイのみんなは、セイファーセックスをしなくなったのでは? また、この答えと矛盾しているけど、ゲイの多くは年をとらずに早く死んでしまい、と思っている。だから、HIVに感染することをするようになったのじゃないのかな」というブライアンさんの答えが印象にのこっています。



f:id:QMblog:20050101023104j:image

f:id:QMblog:20050101023212j:image

f:id:QMblog:20050101023152j:image

ホットライン(電話相談)

f:id:QMblog:20050101023930j:image
ホットラインの業務について説明くださったスーザンさん(右)ジュアンさん(中)。電話相談スペースは、4〜5本程度の回線で相談電話を受けるようになっていて、全米中から電話を相談を受けているそうです。パソコンの前では、リファー先情報ソースの更新中を行っているスタッフがいた。電話相談の「匿名性」を確保するために、電話相談を行うスペースの写真撮影はできないようになっていました。


HIV検査

f:id:QMblog:20050101025929j:image
HIV検査を行う部屋で、説明をしてくれたスタッフ。HIV検査は、予約制だが、当日でも可能。日本の場合も同じように、HIV検査の前にプレとポストのカウンセリングがある。検査の結果を受け止められないような状態にあるクライアントをサポートするために、必ず「もしHIVに感染していることがわかったら、自殺したいと思いますか?」ということを受検希望者に尋ねるようにしている、とのことが印象的でした。


f:id:QMblog:20050101030601j:image
検査の結果が出るまで待つスペース。リラックスできます。


ホリデーシーズンにも関わらず、快くお話を聞かせてくださったGMHCのスタッフの皆様に感謝です。



にほんブログ村 恋愛ブログ 同性愛・ビアン(ノンアダルト)へ 
面白い記事だったら1clickでQMblogを応援☆




ストーンウォール・イン詣

ストーンウォール・イン詣(2008年12月23日)

「ストーンウォール事件」とは?

ここは、1969年6月末に「ストーンウォール事件」が起きた、まさにその現場とされる場所。
「スートンウォール・イン」はニューヨークを訪れるゲイの観光客にとっては、一種の歴史的名所といえるかもしれませんね。

f:id:QMblog:20081220121242j:image

ニューヨークはグリニッジ・ヴィレッジにゲイバー「ストーンウォール・イン」に対する度重なる警察の嫌がらせと酒類販売法違反名目の摘発を背景にして、レズビアンの一人の強制連行をきっかけに業を煮やした女装のゲイ男性とレズビアンたちが警察隊にまず罵倒を浴びせ酒瓶やハイヒールを投げつけたことから始まった。それは以後、表立ってはゲイとはわからなかった客たち(同バーには10代後半から30前後までの比較的若い男性客が多かった)数百人をも参集させて3夜にわたって拡大していった。この事件を契機に、当事者としての同性愛者による動きは、アメリカ国内だけでなく世界的に広がり、様々な地域で同性愛者による活動が急速に展開していった。*1

「歴史」が息づくゲイバー

2008年12月23日の夜に、「ストーンウォール・イン詣」(もうで)をしてきました。
といっても、ただ飲みに行ってきただけですが。

f:id:QMblog:20050101082210j:image

「ストーンウォール・イン」は、今でも普通のゲイバーとして営業されているんですが、ところどころに「歴史」が垣間見れる、写真などがあるところがよかったです。


f:id:QMblog:20050101063030j:image
「ここが、ストーンウォール・ライオットが起きた現場です」とアピールしたパネル。
写真パネル中には「6月27日〜31日」という記述、
6月は31日までないので、突っ込みを入れたところ
(バーテンは即座に「あっ、それね、間違いです(苦笑)」という答え。
よく聞かれるみたいですね。


他にも、昔のゲイパレードの古い写真を飾るなど、歴史的な場所である、という自覚がひしひしと感じられました。

f:id:QMblog:20050101070906j:image

f:id:QMblog:20050101070936j:image


その他店内は、ボン・ジョビなどの80年代の音楽が流れ、ビリヤード台で遊べるような普通のアメリカのゲイバーでした。
f:id:QMblog:20050101064840j:image


にほんブログ村 恋愛ブログ 同性愛・ビアン(ノンアダルト)へ 
面白い記事だったら1clickでQMblogを応援☆




*1:『ゲイ・スタディーズ』から。キース・ヴィンセント他、青土社、1997年

NYのハーヴェイ・ミルク高校とHMI訪問

ハーヴェイ・ミルク高校」と「ヘトリック・マーティン・インスティテュート」を訪問2008年12月19日


1979 年からLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニング=未決の略称)の青少年(21 歳以下)をサポートするNPOであるヘトリック&マーティン協会(HMI

そしてHMIのの研究機関として1985年に発足し、2003年には正式な高校として新たに開校されたハーヴェイ・ミルク・ハイスクール」LGBTの青少年のために、専門的なサービスを行う世界初の公立の教育機関です。


2008年12月のNY視察の中で、当会のユースプログラムS.I.P.の担当者岩本(Mikako)が訪問してきました。

f:id:QMblog:20081220034648j:image:w400

HMIのオフィス

HMIのオフィスはビルの8階にあり、ハーヴェイ・ミルク高校は同じビルの2階でした。


f:id:QMblog:20081220034655j:image:w400
HMIのオフィスには、創設者のヘトリックさんとマーティンさんの銅像や写真、また卒業生たちが撮った生徒たちの写真などが飾られていました。



f:id:QMblog:20081220034638j:image:w400
HMIは、1979 年に、精神科医のへトリックと教育学者のマーティンによって設立された同性愛者の青少年をサポートする組織。ハーヴェイ・ミルク高校の運営の他に、ユースへのカウンセリング、ホームレスユースへの支援などを行っているとのことでした。


HIMの理事長のトーマスさん

f:id:QMblog:20081220034515j:image:w400

まずはHIMの理事長のトーマスさんが、HMIのことやハーヴェイ・ミルク高校についてなど、いろいろお話してくださいました。



ハーヴェイ・ミルク高校

理事長と記念写真をとったあと、ハーヴェイ・ミルク高校の校長先生のアランさん、障害のある生徒を担当している教師がハーヴェイ・ミルク高校を案内してくださいました。

f:id:QMblog:20081220040126j:image:w400


ハーヴェイ・ミルク高校は、15歳から21歳までの、NY市に住むレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーのための高校。同性愛者であることの悩みや、差別によって学校をドロップアウトせざるを得ない状況にあったり、家庭内、学校内でまったくサポートのないLGBTのユースが、高校卒業の資格を得ることができます。現在の、生徒数20名前後ですが、他にも様々なプログラム(職業訓練や、料理やダンスなどのプログラムなど)を行っており実際の利用者はもっと多いと思われます。



ハーヴェイ・ミルク高校へ入学するためには、入学希望者への面接を大切にしている、とのことでした。たくさんいる希望者から、様々なことを聞き取ったあと、その生徒にとって他にさらに適切な場所があれば、そちらの機関へ振り分けれ、ハーヴェイ・ミルク高校の方がふさわしいということになった生徒が入学ということになる。希望者は、多いので、実際に入学するのは、とても困難であることは、容易に想像できました。

f:id:QMblog:20081220040343j:image:w400

そのためもあってか、ハーヴェイ・ミルク高校は、NY市内の他の公立高校に比べて、生徒の卒業率が高いそうです。他の公立高校が70%位の卒業率なのに対し、ハーヴェイミルク高校に入学した生徒は、90%が卒業する、とのことでした。



ハーヴェイ・ミルク高校で教えている教師は、州が派遣する教師たちなので、HMIあるいは、ハーベイミルク高校が教師の採用を行っている訳ではない、というのが校長先生アランさんのお話でした。そもそも教師の採用に性的指向を問う項目はないが、「LGBTの生徒も、いつかは、一般社会に出て行くことになるから、先生までが同性愛者だけになって異性愛者に触れることができないのは、生徒にとってもむしろ良くないと思う」とのことでした。


滞日経験のある先生も。

f:id:QMblog:20081220051120j:image:w400
障害者クラス担当の教師。かつて日本に来たことがある、ということで日本語を話すことができました。


「どのような経緯で、障害クラスを担当するようになったのか?」について質問したところ、元々、別の高校で障害者のクラスを担当していたし、障害のある生徒の方が、障害のない生徒より、出来るまであきらめない姿勢など、教えがいがあると感じている」、とのことでした。「では、どうして、「LGBT」の高校であるハーヴェイ・ミルク高校で教えているのか?」ということを聞いてみたところ、「同性愛者の友達が昔からいた」ということでした。


ちなみ「障害者のクラス」と言っても、日本の特別学級ほどの障害のある生徒ではなく、主にADHD(注意欠陥・多動性障害)やその他、軽い障害を持っている生徒を対象としているようでした。重度の障害をもつ子供に、自らの性的指向をどのように聞くのか? あるいは、それを外からどうやって判断するのか?といったような本質的な質問はできませんでしたが、ハーヴェイ・ミルク高校が、少なくとも自分の性的指向を他者に伝えることができる生徒を入学させている、ということは容易に想像できました。


ハーヴェイ・ミルク高校のカリキュラムなど

授業は、NYの他の公立高校と変わらないそうです。ただ「同性愛の歴史」について学ぶ授業があるので、その中にHMIハーヴェイ・ミルク高校ができた経緯などを教えている、とのことでした。給食を出すため食堂もあり、学校内にはHIVの検査が受けられる環境があったり、カウンセリングも充実、医師も看護師もいるとのことでした。



ビルの1フロアーにある決して広いスペースとはいえないハーヴェイ・ミルク高校ですが、20名前後の生徒に対して、教員の数が9名、事務員が4名、警備員が2名の程度、その他にカウンセラー、医師、看護師などがいて、一人ひとりの生徒へのフォローが行き届いていることが伺えました。もう少し広くした方がいいのではないか?と思ってしまうが、それでも「綺麗になり、広くなったのだ」と校長先生はおっしゃってました。


f:id:QMblog:20081220053928j:image:w400
ハーヴェイ・ミルク高校は、廊下や各教室などに生徒たちが描いた作品が並んでいるなど、生徒たちの表現の場を与えていることがよくわかるようなレイアウトになっていました。

東京のこと、ニューヨークのこと

都市規模は対して変わらない東京とニューヨークだから、同性愛者のための高校の必要性は東京にもあるだろう。でも、同性愛者のための高校を作ろうというような動きは、10年後だろう。そして、開校できるのは早くても15年後位だろうか? 「10年」、「15年」、という年月にリアリティがあるはずもなく、漠然と私がそう思うだけの数字であり、結局は、楽観的な「何年後の希望」に過ぎないのだと思う。


だからといって、今の日本とNY、アカーやS.I.P.とHMI/ハーヴェイ・ミルク高校との圧倒的な差を前に、愕然としている訳でもなく、その差が全く気にならない、というわけでもなく、やはりロールモデルがあることの「安心感」が、歴然とした「差」をポジティブに見せてくれるのだと思う。


S.I.P.の目標をハーベイミルク高校としたならば、今やるべきことは必然的に見えてくる。しかし、今回視察に行って、HMI・ハーベイミルク高校がS.I.P.の目標になると断言できるほどの実績をS.I.P.が積んでいるとも思えないし、またそれほどまでに現在の日本のLGBTのユースの状況を把握できているとも思わない。


目標をどこにするか?ロールモデルがある中で、それを考えるきっけかになった。それが成果と呼べるなら、この視察はきっといつか素晴らしいものだったと言える時が来るだろう。悲観的にではなく楽観的に、そう私は思う。


(Mikako)


にほんブログ村 恋愛ブログ 同性愛・ビアン(ノンアダルト)へ 
面白い記事だったら1clickでQMblogを応援☆




さよなら NYC

12月18日〜25日まで、1週間のニューヨーク・コミュニティ視察から帰って参りました。

f:id:QMblog:20050101144341j:image


今回は、4名のスタッフと1名の通訳ボランィアで、会としては、2003年以来、5年ぶりのニューヨーク視察となりました。


今回は、国際会議等が重なってなかったので、じっくりと現地コミュニティの様子やトレンドをチェックし、ネットワークを構築できた視察となりました。


視察の成果は、帰国後、当会のプログラムや事業へ投資できるように目指すだけでなく、QMblogでも紹介できればと思います。


視察に合わせて、編集担当スタッフが不在で、お休みしていた当QMblogも今日から再開します。




にほんブログ村 恋愛ブログ 同性愛・ビアン(ノンアダルト)へ 
面白い記事だったら1clickでQMblogを応援☆