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レズビアン&ゲイライフをサポートするNPO法人アカーのWEBマガジン。編集部:「ふじべ・あらし」がお伝えしています。

ここからは、もう大丈夫。〜『人生はビギナーズ』 (おすすめ映画!)

先日、ユアン・マクレガー主演の映画『人生はビギナーズ』(原題:Beginners、米国)を観てきました!


文中に書くような理由で、厳密には、ゲイ映画ではないのかもしれないけど、とても、素晴らしい映画だったので、皆さんとシェアしたく久しぶりに映画の感想をブログに書かせてもらいました。

しかも、先日の第84回アカデミー賞授賞式では、息子にカムアウトする父親役を演じたクリストファー・プラマーが歴代最高齢(82歳)で見事、助演男優賞を受賞!!


この国でも、もっとたくさんの人が観るようになるといいなと思います。




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●誰かのいない部屋

見舞い客が、置いていった花は、まだ花瓶に挿さされたまま、色あせている。
父の枕元で父に読み聞かせた本は、そこに積まれたままである。


映画は、父と息子が一緒に生活し(母はずっと前に、他界していて、すでにない)、父が末期ガンの闘病生活を送った部屋に息子がたたずむ場面から始まる。


病院から運び込まれたベッドも撤収されている。
息子は、クローゼットをあけ、父の遺品の服をどんどんゴミ袋に入れていく。
毎日、日課だった薬の錠剤はすべてトイレに流す。

最近まで、誰かが生活していた部屋に漂うのは、濃厚な“不在の感覚”。


●誰かのいない世界


「同性愛」をテーマにするこのブログの周辺としては、映画の中で、75歳になって初めてゲイであることを息子(ユアン・マクレガー)にカムアウトした父(クリストファー・プラマー)のストーリーの方が、より活発な話題を提供するのでしょうけど、それでも、映画の主題は、カムアウトを受けた息子が、父の死後、父の生の意味を受け入れていくより普遍的なプロセスにあると思う。


父を失ったことで、心の中に何か空虚を抱えながらも、息子が生きていく世界は、父の生前と変わらず、陽は昇り、陽は落ちて、都会の夜を車で流すときに流れていくロスアンジェルスの乾いた風景も、何も変わらない。

それでも、息子は父がいない世界のいたるところに、父が生きていた日々の痕跡を見つける。


誰かがこの世を去った後の時間は、すでに故人になった人たちによって遺された時間である、と気付く時、私たちはそれからの人生に新たな一歩を踏み出すビギナーズである。

それが、映画のタイトル(ビギナーズ)の意味であり、メッセージであると私は受け取りました。


パーティーで主人公が、偶然出会うフランス人女優(メラニー・ロラン)とのラブストーリーという横軸についても、主人公が、父(と母)が生きた人生を想うことで、ふたりはつながる。


映画の最後で押し寄せてくる、『ここまで』を、受け入れて初めて広がる『ここから』という感覚に感動しました! 


今、私たちが生きている世界は、絶対的に、誰かがもういない世界であり、(そして、いつかは、みずからも、いなくなる世界になるのだけど、)、そんな感覚の世界の中で生きているすべての人たちに、ここからは、もう大丈夫。と、そっと背中を押すような、ポップで、スタイリッシュで、コミカルで、そして暖かい『人生はビギナーズ』。


おすすめです!!

人生はビギナーズ

人生はビギナーズとは編集


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