両親へのカミング・アウト(第3 回)
●両親へ〜カミングアウト・プロセス(帝)
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両親に同性愛者としてカミングアウトしたとき、帝さんは、
どんな状況を作って、
どんな反応が実際に両親からあったのか?
そして、そのとき何を帝さんが感じたのか?
レズビアン・メンバー帝(てい)さんのエッセイ3回目です。
私は既に独立して生活していますが、
実家と職場が近いこともあって、
両親と普段の対話は適度にしている方だと思います。しかし今回のカムは、
両親に普通に構えられては困るので、
「改めて話がある」という宣戦布告を、
母には以前からチラつかせておりました。
両親としては、
間違っても私に結婚の可能性が無いことは承知しているので、
何を話しに来るのかと気になって、「聞きたいけど聞きたくない」ピークだったことでしょう。
当日は、双方ともただならぬ緊張感の中。
両親には、
正面へ並んで座ってもらい、
私は、走り書きだらけの手紙(兼・台本)を傍らに置いて、正座。
「前置きはいいから」
と話を促す父と、
「まあ、お茶の1杯でも飲んでから」
と言いつつも、前夜、メールで探りを入れてきた母。
まず、予定していたカムの内容から。
「伝え終えるまでは、言葉を挟まずに聞いて欲しい」
とお願いして話を始めました。
話をするに至った経緯を、
少し前置きしてから、
「私は、もうずっと以前から、異性愛者ではなく、同性愛者と自認して生きてきました。」
と、言葉に出してしまうまで、本当に緊張しました。
目の前の両親を見ても、
下を向いたままの母と、
眼鏡を外して、目をつぶったままの父。
黙って聞いてくれとお願いしたのは私だし、
反応が読み取れないのは当たり前ですが…。
そのまま20分位は一人で喋っていたでしょうか、
なるべくゆっくり、言葉を区切りながら伝えました。
話を終えたあと、
まず、父からはこんな言葉。「想像もつかない事だったので驚いている。
『同性愛』という言葉は好きではないし、その言葉を聞くのも抵抗はある。
しかし人それぞれの生き方があるし、
その(私の選んだ)生き方を批判する気持ちは無い。
なにも、それを周りや職場に言ってまわる必要もないだろうし、
同性愛などと堅苦しく考えず、相手とも「仲の良い友達」という捉え方でいいのではないか。
今日は、いきなりの事で頭の中が真っ白だし、
こんなところで勘弁してほしい。
今後も、(父の)気持ちを変えたいのなら、また話をすればいい」
といった内容。
早々に、社会的な面から捉える発言が出るあたりが、
「やっぱり」という感じ。
同性愛に関する意識は、
フォビアが根強い年代だから、
最初としては、まずまずの範囲内ではないかと感じました。
でも、まさに本質的と言うか、
ここが一番大変なところですよね。
母は、基本的に父と同調。
「今の時代は多種多様な生き方でもいい、
健康でいてくれればそれでいい」
と。
しかしその後、
私と2人きりになると、出てくる、出てくる(笑)。
「あなたは、これから外見が男っぽくなっていったりするの?」
とか。
…いいえ母さん、もう逆行しませんよ。
「ニューハーフの人がその姿で田舎に帰ってくるやつ、あれ親はビックリね。」
とか。
…ですから母さん、TVの見過ぎです。
といった、外見(容姿)にこだわる発言を連発するので、
そうでは無くて、と少しだけ話(LGBT程度)をしましたが、
やはり首をかしげる母。
そして、その後は
「相手の方はどんな人?」といった種類の質問も、連射(笑)。
そういった疑問や反応の言葉に、
私がひとしきり答えるうちに、
母はもう気が済んだらしく(強烈なB型です)、
もう後半には、いつものパターンである、
「母の父に対する愚痴聞き」になっていました。
帰り際には、
「これ2人で食べて」、
「相手の方に会うのが楽しみ」、
「応援してるわ」、
など、
ノリが良過ぎて、
微妙に危険な感じすら…(笑)。
その夜、タイミング良く彼女を駅でキャッチして、
カム報告しながらの帰宅途中で、偶然、
大きな流れ星を見て(ふたご座流星群だったみたいです)、
彼女から、同じ日にジョディ・フォスターがカミングアウトしたらしい、
というニュース。
私のホッとした気持ちに乗っかったようで、嬉しかったです。
(帝/2007年12月)【続く】