田んぼの上の街のカプチーノの上の猫〜越谷レイクタウン〜
現在、日本最大のショッピングセンターレイクタウンがある用地には、ほんの数年前まで一面の田甫が広がっていて、越谷市市営の斎場が一軒だけさびしく建っていたという。
近隣の人々が夜、用事があって、その暗闇を通り過ぎないといけないとき、彼らは、「早く向こう側に突っ切れればよいのに」と目をつぶって足早にそこを通り過ぎた、という。その当時の暗がりの上空で今、たくさんのデートや家族団らんやパートやアルバイトが繰り広げられている。
“kaze”ゾーンと“mori”ゾーンをつなぐ渡り廊下に、無数の人々が豆粒くらいの大きさで行き交うのが見える。ここは羽田空港か成田空港かと、言われても少しも大袈裟でないような巨大な空中庭園が、ある日、突如として田んぼの中に現れた。
この話を聞いて、私はまだ行ったことのないラスベガスを思い浮かべた。
ネバダの砂漠に突如現れたネオンの町のことを。
田んぼの上にできた街の、喫茶コーナーの、カプチーノの上にできた猫の顔を眺めながら、夢想する。そんな午後。
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