LGBTのホームレス・ユースをサポートしているスティーブンさんへのインタビュー
LGBTのホームレス・ユースをサポートしているスティーブンさんへのインタビュー
レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(LGBT)のホームレスユースを対象にシェルターやプログラムを提供しているアリ・フォーニー・センター。職員のスティーブンさんへ、仕事について、ホームレスの現状についてお話うかがいました。
【アリ・フォーニー・センター施設内の様子についてはこちら】(2008年12月24日、同行者:岩本、藤部)
◆スティーブンさんへのインタビュー
- Q:「NYのホームレス・ユースは、自分の力でここ(ドロップインセンター)をみつけて、自分の足でここにやってくるのでしょうか? それとも、こちらから助けが必要なユースをストリートに探しに行くのでしょうか?」
- A:「両方の場合があるけれど、既にここにやってきているユースが、他のユースを連れてくる、というのが一番多いかな。もちろん、スタッフがアウトリーチを行って、連れてくることもある」
- Q:「アウトリーチを行うとき、子どもたちから警戒される、ということはあるのでしょうか?」
- A:「『邪魔しないでくれ、放っておいてくれ』という態度をされることはよくある。けれど、コンドームを渡したりすると、子どもたちは喜んで受け取ってくれる。ニューヨークでは、コンドームはお金を出して買わないといけないものだし、身体を売っていることが多い彼らにとっては、必需品だから。なにより、最初は警戒されても、何回もアウトリーチしにいくことが重要なんだ。またアウトリーチを行うスタッフは、“ヒップ”でないといけない。つまり、音楽、テレビ番組、服装など、子供たちから親近感や尊敬を得るような知識や格好、態度がアウトリーチを行うスタッフには必要なんだ」
- A:「ニューヨークでも同じだ。」
ドロップインセンター周辺の路上。センターの名前になっている、Ali Forneyとは、実際に1990年代を路上で過ごしたホームレス・ユースの名前からとられています。Ali Forneyは、その後、LGBTホームレス・ユースのサポート活動を開始しますが、1997年、Ali Forneyは何者かによってストリートで殺害されてしまいます。彼を殺したものは現在でもまだ特定されていないそうです。Ali Forneyの死は、NYのLGBTユースの厳しい現状を如実に表しているのかもしれません。
- Q:「1回のアウトリーチで、何人のスタッフが行っていますか?」
- A:「4人一組でチームになってアウトリーチをすることが多い。アウトリーチを行うストリートに到着したら、バラバラに分散して動くようにしている。お前はここのエリア、オレはこっち、といろいろと分担、手分けできるからね。またストリートのユースは、グループでたむろしていることが多いから、その人数に合わせてアウトリーチする人数も決めるようにしている。もちろん、アウトリーチを行うスタッフの人数は、多ければ多いほどいい。でも、だいたい4人かな。」
- Q:「アリフォニーがサポートしているユースの年齢はどれくらいでしょうか?」
- A:「ここでは、16歳から24歳まで。13歳から22歳までアウトリーチしている、というところもあるよ」
- Q:「今、ここのドロップインセンターには何人のホームレス・ユースがいるのでしょうか?」
- A:「20名のユースがいる。中には、自分の家で、暮らしているユースもいるけど。センターの資金のほとんどは、彼らが暮らすための家賃で消えてしまうんだ」
◆スティーブンさん
気さくかつ、友好的にツアーとインタビューに答えてくれたスティーブンさんですが、見学のためにセンターに足を踏み入れた直後は、「門前払い」をくらうか、と思いました。スティーブンさんが、「ここに来た目的は?」、「ここの見学をするために、お金はもらっているのか?」など、矢継ぎ早に質問を投げかけてきたからです。それらの質問に私たちが答えて初めて、彼はインタビューのためのスタッフルームに私たちを通してくれたのでした。
またこちらからのどんな問題に対しても、スティーブンさんは、「日本、東京での状況はどうなの?」と私たちに多くの質問を投げかけてきました。私たちが、こんなにも日本や東京の状況を質問されたのは、今回のNY視察で初めてのことでした。
◆東京での「家出」ユースの状況
例えば、インタビューの途中で「さっき、ネットでCNNのニュースをチェックしてたんだけど、日本も不景気になって、家のない人たちが増えているんだって? そうすると、レズビアン、ゲイのホームレス・ユースも増えているのかな?」と質問がありました。
日本では、一般のホームレスへのサポート自体がなかなか行き届いていない。その中で、さらに同性愛者のホームレス・ユースへのサポートを特化して行うのは、まだとても難しい。また、日本特有の現象として、完全に家がない状態のLGユースにアクセスするのは、なかなか難しい。多くの「家出」したLGのユースたちは、「漫画喫茶」や友達の家を泊まってまわっていたり、「夏の間だけ」といった期間限定で、東京近郊の都市から東京に出てきて、売春し、その間ホテル暮らしをして、そして帰っていく、というユースもいる。現在、私たちが実施しようとしているのは、そういった「家出」ユースたちのまずは状況を把握して、そこから具体的にどのようにホームレスユースへのサポートをしていくかということ。言ってみると、「準備段階の前の調査の段階」。だから、アリ・フォーニーを訪問できて、本当に参考になった。ということをスティーブンさんに伝えました。
スティーブンさんは、「他に聞きたいことがあれば、いつでもサポートするよ。必要なときは、何でも言ってくれ」と答えてくれました。また日本では、「LGBTユースのことでは、助成金が出ない」と言うと、具体的な国際助成団体の名前を挙げて「ここはどうか? ここもだめか?」とかなり具体的なアドバイスをしてくれた。
スティーブンさんに再度、Ali Forney Centerに来たかった理由と、そして突然にも関わらず大変よく案内してくれ、話しをしてくれたことの御礼を伝え、写真をとって終了しました。
◆Ali Forney Centerの視察を終えて
Ali Forney Centerは今回訪問したどのユースセンターより汚かったし、そして、一番、あわただしかった。また、事前のメール&電話でのアポ取りの段階で「忙しいから」と訪問を断られた唯一の団体でした。けれども、現地についてからの(ドロップインセンターでない)事務所の方へ突撃訪問してのアポトリということを行った結果、非常に友好的に対応してくれたのもAli Forney Centerでした。