世界最大のHIV/エイズ団体! GMHCを訪問
GMHC訪問〜2008年12月23日
GMHC(Gay Men's Health Crisis)は、エイズ禍が、本格的にニューヨークのゲイ・コミュニティーを襲う前の1981年、数人のゲイによって始められました。設立当初の資金は10万円程度、公的資金の援助は、まったくない状況からスタートだったそうです。現在では、感染経路、性別、性的指向、人種を問わず広く、HIVの予防活動や患者・感染者への支援を行う、世界最大のHIV/エイズ団体になっています。
ビル全体が関連フロアー
巨大なビル一棟が1階から最上階まですべてがGMHC関連のフロアー。各フロアーに、感染者を治療する病院から、法律部門、予防教育部門など、たくさんの部門が仕事をしていました。ホリデー・シーズンに突入していた12月23日、私たちが訪問して、お話をうかがったのは、主にゲイへの予防啓発を行う部門でした。
ゲイへの予防啓発
テーブルに啓発資材をずらっと並べて、各担当者が説明してくださいました。ニューヨーク市を始め全米では、黒人やヒスパニック系のゲイの間での急激なHIV感染が問題になっていることを受けて、GMHCでも、有色人種をターゲットにしたソーシャルマーケティングの手法を使った、たくさんのキャンペーンを行っている、とのことでした。
キャンペーンを始めるにあたって、どのようにして対象層からインタビューを行い、パンフレットを作成していったのかなどのプロセスなどについて説明がありました。「キャンペーンの効果評価は、どのように行っているのか?」 また「対象層が、イメージを目にすることが、実際の行動変容にどれだけつながるのか?」など、研究サイドからの質問も投げかけてみました。
ニューヨークと東京と場所は違えども、共に巨大なゲイ人口を持ち、そこでそれぞれゲイ向けの予防啓発を実施している共通の立場から、ニューヨークと東京、日本のゲイの間での感染について、いろいろなトピックをシェアすることができました。
例えば、近年のニューヨークのゲイの間では、クリスタルメスというセックス・ドラッグが爆発的に流行っていて、セックスドラッグの影響下で行ったセックスが感染を引き上げている、とのことでした。数年前、日本でも「5meo」が流行した時に、ゲイ向けの出会い掲示板に「ゴメオ・キメキメで〜」のような表現でパートナーを探すようなことがありましたが、ニューヨークでも、“PNP”(party and playの意)という掲示板でよく見られる隠語が、ドラッグや酒を使ってセックスすることを指している、なんてことも教えてもらいました。
コミュニティ啓発のコーディネーターを務めるブライアン・トイネスさん(左)、ゲイ部門のディレクターのビル・スタックハウス博士(中)。ブライアンさんは、お話の後、ビルの中のツアーの役を引き受けてくださいました。
「かつて欧米のゲイコミュニティでは、一度は感染を抑えることができたはずなのに、どうして近年またゲイの間での感染者が増えていると考えるか?」というある意味、とっても本質的な質問もぶつけてみました。それに対して、「エイズ治療薬が発達して、感染しても死ななくなったから、ゲイのみんなは、セイファーセックスをしなくなったのでは? また、この答えと矛盾しているけど、ゲイの多くは年をとらずに早く死んでしまい、と思っている。だから、HIVに感染することをするようになったのじゃないのかな」というブライアンさんの答えが印象にのこっています。
ホットライン(電話相談)
ホットラインの業務について説明くださったスーザンさん(右)ジュアンさん(中)。電話相談スペースは、4〜5本程度の回線で相談電話を受けるようになっていて、全米中から電話を相談を受けているそうです。パソコンの前では、リファー先情報ソースの更新中を行っているスタッフがいた。電話相談の「匿名性」を確保するために、電話相談を行うスペースの写真撮影はできないようになっていました。