エイズの出現
「サンフランシスコ・ゲイ・コミュニティ形成史」
1970 年代を通じて、ハーヴェイ・ミルクの出現により着実に政治的勢力を強化したサンフランシスコのゲイ・コミュニティは、1980年代、ミルクの亡き後、エイズという新たな“侵入者”を迎えることになったのである。
その“侵入者”は、ゲイコミュニティの指導者や住民に次々と襲い掛かり、コミュニティ存続の危機ということまでささやかれた。
そして、それまでのゲイ解放運動によってある程度達成された「性の解放」は、エイズの出現により、「そもそも性の解放は、本当に積極的に達成されるべきものであったのか」ということを疑問視する声もでてきたのである。
しかしながら、このような状況の中でも、エイズを中心とした活動によりゲイコミュニティの中の結束はさらに緊密なものになったという報告もある。
エイズの問題は、コミュニティの存続の問題であるがゆえに様々な思想や問題をはらんでいる。
ここでは紙幅に限りがあるので、それについての詳述は後日の機会を待つことにしたい。
【完】 「サンフランシスコ・ゲイ・コミュニティ形成史」
※(本記事は当時のアカーの機関紙『ゲイ・ライツ』の1993年臨時増刊号に掲載された同名記事をベースにしています)