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エジプト十字架の秘密〜「新宿二丁目」をめぐる短編

事件は、牧村一人の詐欺(さぎ)事件として処理された。



捜査の手は帝国ホテル経営陣にも及び、それがきっかけで、創業者一族も株主総会において、経営側から一掃された。

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地上げ資金も使途不明金として処理された。




大喜書房の仁藤社長も沈黙を強いられ、「ダリア」の売り上げは結局、下がりはするものの、決して伸びることはなかった。地上げは挫折した。




あとには「新宿第二帝国ホテル(仮)建設計画書」なる紙切れが、バーのマスター達に残された。

だがそんなものも、やがて破られ捨てられ、忘れられた。



牧村の出奔により、「新宿二丁目」は残った。


牧村は最後に、この街を救ったのだった。



「ファラオ」には今でも、牧村があの時右手で玩(もてあそ)んだエジプト十字架が、棚の隅に飾ってある。

「この十字架はね、愛は憎しみに、憎しみは愛に変えちゃうの。ま、どっちも似たようなもんだけど……」


「ファラオ」のマスターは店の看板を持ち、そう言って外に出ていった。


牧村はあれきり、二度と現れなかった。

(終)

(逆島鉈 さかしま・なたる)

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