QMblog's blog

レズビアン&ゲイライフをサポートするNPO法人アカーのWEBマガジン。編集部:「ふじべ・あらし」がお伝えしています。

あの夏の日の午後(3回目)

悦子は横になり、しばらくすると寝息をたて始めた。寝入ってしまったらしい。


夏のうだるような暑さから少し逃れられた部屋で、彼女の寝顔を見ていると幸せだった。

半分だけ開けられた窓から、心地良い風が入ってきて、カーテンの影が彼女の顔に影をおとしていた。そんな光景を見ながら、私は、満ち足りたような、何とも言い難(がた)い気持ちになった。

―――18歳の夏。高校3だった智子さんは、悦子と一緒に受験勉強するために図書館に通っていたのでした。そんなある夏の日の午後、いつもように図書館に行くと、あいにくの休刊日。それなら悦子の部屋で勉強をしようと勉強を始めたところ、やがて勉強に疲れた悦子は「眠い」と言って布団をしき、寝入ってしまったのでした!! 智子さんの「初恋」についてのレズビアン・ライフヒストリーの3回目です。(Arashi)

「綺麗だ」と思い、同時に、私の手が悦子の髪に触れようとしていた。


「触れたい」という欲望がある。そのことに気づいた。


ようやく髪に手が触れようとしたその瞬間。

「どうしたの?」

悦子は、目を覚ました。


私を見上げている悦子の瞳に、驚きと恐怖が混じったもの浮かんだ、ような気がした。


なにか取り返しのつかない事をしてしまった。後悔が押し寄せて、一瞬にして現実に戻された。


気づかれた。隠してきた気持ちも、私たちの関係も、もはやこれまでだ。と思った。


実際のところ、悦子は何も気づいてはいなかったのではないか、と思う。


けれども、私にとっては、かなりのダメージで、今後はくれぐれも注意すべき事、と反省した。悦子との仲を維持したいのなら。これからもっと親密になりたいのなら。


(智子)【続く】