あの夏の夜の出来事〜(正和3回目)
あの頃をみつめて
ライフヒストリー・スナップ
「あの夏の夜の出来事」(正和3回目
サトシが部活を辞めた日。
サトシは、発車時刻を待つ帰りの電車の中で、また泣きだした。
かなり大泣きしている。
彼の肩に腕を回しながら、なぐさめの言葉をかけていると、窓の外を他の生徒たちが、何事かという表情でこちらを見ながら通り過ぎていく。
―――正和さんの「初恋」についてのゲイ・ライフヒストリーの3回目です。(Arashi)
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窓の外の生徒たちの視線が少し気になったけれど、どうでもよいとも思った。
ただ、サトシが、自身の哀しみの世界に入り込んでいるのが少し哀しかった。
こちらを全く意識していないようで。
電車が発車してしばらくして、サトシも落着いてきた。
「正和がいなければ、もっと大泣きしていた」などと言ってくる。
まったく、こいつは時々残酷なことをさらりと言ってのける。
もう何度、こんな残酷な言葉を聞かされてきただろう。
こんな言葉を、素直に友情だけに収めきれない自分に、僕は何度イラついてきたか、知れないというのに。
(正和)【続く】