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エジプト十字架の秘密(2/5)

牧村伸一は、大手私鉄資本による不動産会社の営業マンである。色白の長身に、するどい目元を持った牧村が、自身をゲイだと“認定”したのは25才のことだ。

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彼はあるゲイ雑誌の社長から密命をうけ、極秘に二丁目のバーの大半の地上げを行っていた。



この前年の暮れに、ある野心的なゲイ雑誌が創刊された。ノア出版の『バード』である。そしてこの新雑誌は、長年売り上げがトップの座を独占していた『ダリア』を抜き、王座に就いた。『バード』の売り上げが伸びるにつれ『ダリア』の業績は急激に降下した。


都市人口が80万以上の地方都市には、ゲイショップが必ず存在する。『ダリア』誌はそれまで、日本の各地方のゲイのネットワークをフォローする誌面作りをしていた。広く浅く情報を掲載していた。しかし『バード』は、新宿二丁目からの流行発信媒体に徹(てっ)した。古くからの伝統誌面の『ダリア』が、若者中心の流行発信誌に敗北したのは当然ともいえた。『ダリア』が地方の小売り店に圧力をかけ『バード』を返本させ不買工作をしたが、焼け石に水だった。『バード』の売り上げは、全国的に空前とも言える伸びを示した。




『ダリア』誌の大喜書房の仁藤社長が「二丁目解体」を計画して、第二帝国ホテルの建設を誘致したのは、このような理由からだった。そしてあるバーのマスターの紹介によって、牧村が、『ダリア』側に雇われた。



(逆島鉈 さかしま・なたる)【続く】

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連載にあたって:
第1話:「八百万の死にざま」

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