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レズビアン&ゲイライフをサポートするNPO法人アカーのWEBマガジン。編集部:「ふじべ・あらし」がお伝えしています。

「同性愛者にとっての表現の自由とポルノグラフィー」〜1999年の『QM』4月号から

昨日の記事でも予告したように、『QM』誌の1999年のバックナンバー記事を掲載します。ウの目担当のYanagihashiさんが、有名なゲイ・アーティストのロバート・メイブルソープの写真集の海外からの持込についての論争を枕にして同性愛者にとっての「ポルノグラフィー」について書いてあります。法律用語が飛び交うちょっと難解な記事ですが、私は、がんばって読んでみました。(Arashi)

「同性者にとっての表現の自由とポルノグラフィー(1999年4月号)」


メイプルソープの写真集「ROBERT MAPPLETHORPE」を個人観賞用に輸入した男性が、「風俗を害する物品である」として関税で輸入禁止にされた事件。その最高判決(第3小法廷)が2月23日[1999年当時]にありました。



結果は、「輸入禁止は合法・合憲」というもの。判決は、同性愛に関する表現の是非について直接争われたものではありませんが、これを素材に、「同性愛者にとっての表現の自由とポルノグラフィー」について考えてみましょう。


◆同性愛者とポルノグラフィー

日本では猥褻物(わいせつぶつ)の販売・頒布(はんぷ)は刑罰の対象ですが、単なる所持は、刑罰の対象ではありません。


ところで、その猥褻(わいせつ)という用語、最高裁では、次のように定義されています。

「徒(いたず)らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性器羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」(昭和32年3月12日判決)。


そして、猥褻かどうかを判断するときには、

「その表現の程度・手法・比重・芸術性や思想性により緩和の程度等も総合して判断される」

とされています。


◆抑圧に対してのポルノグラフィ

とすると、アカーの事務所にもいくつか置いてあるゲイ雑誌やゲイビデオ。当然、猥褻物(わいせつぶつ)に当たりそうです。


もちろん、表現の自由を尊重するアカーが、「雑誌・ビデオのボカシがあまい!」
と、警察に告発するなんてこと考えられません。むしろ「正常な性道徳」や「社会通念」によって、同性に対して性的な欲求をもつことを抑圧されてきた同性愛者たちの長い歴史からすれば、同性への欲望を肯定するポルノグラフィは、もっと肯定的に評価されてよいのかもしれません。

◆ポルノグラフィへの新たな視点

それでは、同性愛者にとってポルノグラフィとは、同性愛者の性的自由と権利を保障する、手放して賞賛すべき存在なのでしょうか?


確かに、ポルノグラフィによって「同性に対する性欲を肯定できた」とする人がたくさんいます。と同時に、次のような側面も、同性愛者たちの中で、もっと問われてもいいことではないでしょうか?

  • ポルノグラフィーの持つ生々しいイメージが強く、同性愛者がクローゼットにとどまることを助長していないか?
  • レズビアン、ゲイであることを、性的問題に限定する作用を果たしていないか?(セックスをすること、恋人がいることだけでしか同性愛者であることを自覚できない、など)


「表現の自由」の基になっているのは、「思想の自由市場」という理念です。思想の自由市場は、「自立的な情報の送り手と受け手の存在」を前提としています。


ポルノグラフィについても、権力への抵抗という視点は持ちながらも、
情報の受け手と送り手の対等のコミュニケーションの中から形を変えていく、という視点を持つことも必要ではないでしょうか?

(Yanagihashi, 1999年3月)

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