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レズビアン&ゲイライフをサポートするNPO法人アカーのWEBマガジン。編集部:「ふじべ・あらし」がお伝えしています。

『友たちが遺した“生”の風景』〜コミュニティ・メモリアル・サービス2007レポート


9月30日、新宿の経王寺で、本年のメモリアル・サービスが開催されました。これは、私たちの近くで亡くなった方たちとの縁やつながりに感謝の気持ちを伝えるための恒例のコミュニティ・メモリアル・サービスです。 今回は、「ともお」さんにレポートしていただきました。


NPO法人アカー(OCCUR)コミュニティ・メモリアル・サービス2007 報告

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◆これまでのこと

一昨年の2005年の秋、当会のメンバーだった馬場英行さんの一周忌を、大阪よりご両親をお招きして開催しました。そんな経緯とそのときの経験がもとになり、翌年の2006年は、私たちと縁のあった、さらに4名の故人を偲び、生前の活躍を紹介する会を主催しました。




会を重ねるごとに、年に一度はこのような場が必要なのではないかと考えるようになりました。本年は、これまで以上に幅広く、仲間や友人を追悼する場として、コミュニティ・メモリアル・サービスを実施することになりました。アカーというグループと活動の場とその周辺で、さまざまな出会いや縁があり、そのような縁のあった故人を、関わりがあった人たちで追悼する場です。
 

◆協力者との出会い


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過去3回、会場としてお借りしたのは、新宿にある経王寺というお寺です。2005年の神戸での国際エイズ会議を通したネットワークが縁で、この寺の住職、互井観章さんと出会うことができたこと、それがこのお寺から協力を得ることになったきっかけでした。



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互井さんは、アカーの活動や同性愛についても正面から理解し、会としてこのようなメモリアル・サービスを行う趣旨についても賛同され、毎回運営方法についてもご相談させていただいています。


◆今回の内容


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今年は、9月の最終の日曜日に開催しました。たくさんの方々が経王寺に集まり、行うことができました。



今回は、第一部を特別メモリアルとして、作家の故・井田真木子さんについて紹介し、つづいて第二部では、アカーやコミュニティで関わりのあった故人16名を紹介しました。また第三部では、住職より読経と法話をいただきました。


◆井田さんについて


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第一部で紹介した作家の井田真木子さんは、2001年3月に亡くなられました。井田さんは、著書『同性愛者たち』(文藝春秋社)の取材として、アカーのメンバー7人に密着取材されました。




サンフランシスコやベルリンなど、当時のメンバーに同行した現在進行形の取材の様子も、スライドや映像でご紹介しました。





さらに、井田さんの著書「同性愛者たち」に影響を受けた方々の中から、当事者、親、支援者の立場から思いを文章で寄せてもらい、当日には一部朗読でその文章をご紹介させていただき、その他の内容は配布された追悼集にも収録されました。



◆16名のご紹介


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後半の第2部では、アカーの周辺で様々な接点で携わった、関係者の故人16名をご紹介し、参加者一同で追悼しました。私たちと出会った経験や年代、ともに過ごした時間、ご支援やご協力をいただいたこと、伝え残していきたいこと、そして故人の「人となり」などをご紹介しました。




16名の方々とは、さまざまな関わりがありましたが、私たちと彼ら彼女らとを結ぶ縁を7つのグループ(「同性愛者たちの親」「府中青年の家・裁判支援者」「同性愛者の大人〜私たちのロールモデル」「レズビアン&ゲイ・ライツに貢献した方」「同性愛者のライフスタイル」「文化的接点で活躍された方」「ゲイ・バッシングの犠牲者」)として結びあげることで紹介しました。



◆終了後の懇親会


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メモリアル・サービス終了後は、お寺の2階をお借りして、懇親会を行いました。メンバーの手作りの料理でひとしきり感想を伝え合った後は、互いに見知らぬ、親御さんと若い世代のゲイ・レズビアン・ユースが親子関係について語り合い、とても自然な希求がもたらされる会話がいつまでも続きました。




レズビアン・ゲイの生活に関わって、この世を去って行った16名の方々が縁として寄り集まったこの会には、夜通し語りつくしても語りつくせない何かが、参列者の胸に託されたような一夜であった気がします。


◆同性愛者にとってのメモリアル・サービス

同性愛者の葬送は、故人がどのような活躍や貢献をしたにもかかわらず、ごく一般的な経歴を供にして見送りをされることが多くあります。故人がどのような思いで、コミュニティとどのようなつながりを持ちえたかを遺族や仲間の中で伝え合う場は難しいのかもしれません。さらに、その軌跡をどのように後世に伝えていくかは、現時点では試行錯誤の段階と言えるでしょう。



しかし、私たちが今、享受している同性愛者の状況や環境について、先人や仲間の努力、貢献、苦労した蓄積を抜きに、今のレズビアン&ゲイ・ライフを進めていくことはできません。一年に一度、このような場を設け、集まって頂ける方々とともに、先人や亡き仲間を追悼し、自分たちが今いる場所に感謝する機会を持っていきたいと思います。





まだまだ試行錯誤ではありますが、このような趣旨を掲げながら、多くのみなさまに広くご参加いただけるメモリアル・サービスを行っていきたいと思います。


菅原智雄)


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