福島次郎『剣と寒紅』の感想文への8年ぶりの感想文
福島次郎『剣と寒紅』の感想文への8年ぶりの感想文
8年ぶりに読み返して恥ずかしい。。。
8年ぶりに 読み返しました。昨日の福島次郎『剣と寒紅』についての記事のことです。
ふてぶてしくて、頭でっかち。いかにも喰えない感じが文章からにじみ出てますね。とっても恥ずかしいです。
実はドン引きしてました
まあ、そこは「若かった」、と目をつぶっていただくとして、やはり今改めて感じるのは、当時の私も、世間のみなみな様と同じく突然あらわれた「福島次郎」という存在にドン引きしていた、ということです。
出版当時、『三島由紀夫――剣と寒紅』といえば、三島由紀夫の愛人関係を赤裸々につづった、昨今でいうところの「『ふぞろいな秘密』も真っ青の「トンデモ本」という受け取られ方。
まだイシハラさんの方は、読んでみたいという下世話さを刺激する分カワイイかもしれませんが、福島次郎の描く、地を這うような、同性愛の苦悩は、いくら同じゲイではあっても、当時の私には、いっきに飲み下すには苦すぎました。
「ナメクジの美学」なんて居直られた日には、「卑下しすぎ! 『化け物』以外の何者でもない。」と一刀両断に切り捨てる気持ちが、実は本音だったのです。
フェアでない評価
三島由紀夫との関係で語られることの多い福島次郎ですが、それはフェアじゃないと思います。
「『ホモじゃない』というポーズをとりながら、その実『ホモの世界』を描いた」三島は確かに凄いのかもしれないけど、それなら「同性愛者として同性愛の世界を描いた」福島次郎の壮絶さは、ある意味では、もっとすごいと思います。
そんな福島次郎の「一人のゲイとして生き様」をちゃんと評価できる、地に足の着いたニュートラルさが、ちょいと不足しているんではないでしょうか?
「アウトサイダーの世界」として評価(芥川賞選考での某東京都知事はこちら側でした)でもない、「同性愛の後ろめさだけ」と切り捨てる(8年前の私はこちらでした)のでもない、その中間の立場が。
同じ空の下
実際に、昭和初頭に生まれ(福島次郎は昭和6年生まれ)、昭和20、30、40年代と「ゲイライフ」(と呼んでよいのかわかりませんが)を送ってきた方たち(今の60、70歳代のゲイ)に、話を聞く機会があると、ふと気づかされる感覚があります。
なんだかんだいっても、彼らは、今、私たちの上に広がっているのと同じ空の、同じ側の下にいたのではないか?と感じるようなこと多いです。
「昭和のゲイ」として、ロマンチックな郷愁で味を薄め
たり、あまりにも痛いからと目をそむけるよりも、まずは少しずつでも、向き合ってみようかな、というのが、当サイトで、福島次郎を取り上げていこうと思った理由であります。
なぜ福島次郎は、人生の後半で、表に出てきて、同性愛者として書き始めたのか?それがカギになるのでは、と思うのであります。
8年前の感想文についての感想文は、ひとまず、ここまで。(Arashi)
- 作者: 福島次郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1998/03
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 71回
- この商品を含むブログ (30件) を見る
■関連記事:福島次郎
↑ 面白い記事だったら1clickでQMblogを応援☆